セクハラの相談を受けたら会社はどう動く?放置すると会社の責任になることも

「職場の上司から、年齢や結婚のことを繰り返し言われて困っています」

従業員からこのような相談を受けたとき、会社はどう対応すればよいのでしょうか。

「本人に悪気はなかった」「まずは当事者同士で話し合ってもらおう」と考える経営者もいるかもしれません。

しかし、セクハラの相談を受けた会社には、事実関係を確認し、状況に応じて適切に対応することが求められます。

問題を放置したことで、加害者だけでなく会社自身の責任が問われる場合もあります。

今回は、社長とオフィスキタ代表・北のやり取りから、相談を受けた際の実務対応を考えます。

1.「結婚しないの?」という発言もセクハラになる?

社長

うちの営業部長について、女性の派遣社員から相談がありました。

年齢や結婚していないことを繰り返し話題にされ、下品な冗談まで言われるそうです。

本人はかなり苦痛を感じていて、仕事にも支障が出ていると話しています。

身体に触れたわけではないようですが、これもセクハラになるのでしょうか?

北

セクハラは、身体への接触がある場合に限られません。

本人の意に反する性的な言動によって、働く環境が害される場合も、セクハラに該当し得ます。

例えば、性的な冗談を繰り返したり、結婚や性的な事柄について執拗に質問したりすることが問題になる場合があります。

ただし、年齢や結婚に関する発言が、すべて直ちに法律上のセクハラに当たるというわけではありません。実際の言葉、頻度、前後の状況、本人の受け止め方や職場への影響などを確認する必要があります。

「触っていないから問題ない」「冗談だから大丈夫」という判断は危険です。

まずは、どのような言動があったのかを具体的に把握しましょう。

2.相談を受けたら、まず何をすればいい?

社長

本人から話を聞いた段階で、すぐ営業部長を呼んで注意するべきでしょうか?

それとも、本人同士で話し合ってもらう方がいいのでしょうか?

北

まずは相談者の話を丁寧に聞き、事実関係を整理することです。

具体的には、いつ、どこで、誰が、どのような発言や行為をしたのか、ほかに見聞きした人がいるか、仕事にどのような影響が出ているかを確認します。

そのうえで、営業部長本人や、必要に応じて周囲の従業員からも事情を聞きます。

大切なのは、相談を受けた時点で、セクハラがあったとも、なかったとも決めつけないことです。

一方で、調査が終わるまで何もしなくてよいわけでもありません。

相談者が引き続き不快な言動を受けるおそれがある場合には、業務上の接触を減らすなど、必要な保護措置も検討します。

なお、今回の相談者は派遣社員です。

派遣社員については、派遣元だけでなく、実際に働く派遣先にもセクハラ防止措置が求められます。

「うちの会社が雇っている社員ではないから、派遣会社に任せればよい」という対応はできません。

派遣元とも連携しながら、適切に対処する必要があります。

3.セクハラと分かったら、営業部長を処分すべき?

社長

調査の結果、営業部長が不適切な発言を繰り返していたことが分かったとします。

その場合は、懲戒処分をすることになるのでしょうか?

北

事実関係や行為の程度によっては、懲戒処分が必要になる場合があります。

例えば、女性従業員に対して性的な発言を繰り返していた管理職に対する出勤停止処分などが争われた裁判例があります。

この裁判では、言動の内容や職場への影響などを踏まえ、会社が行った出勤停止処分と降格が有効と判断されました。

ただし、セクハラが認められれば、必ず解雇できるということではありません。

会社としては、発言や行為の内容、継続性、立場の違い、過去の対応、就業規則の懲戒規定などを確認し、処分の必要性と程度を判断することになります。

また、懲戒処分とは別に、相談者が安心して働けるよう、配置や業務上の接触方法を見直す必要がある場合もあります。

加害者を処分すれば、それですべて解決するわけではありません。

職場環境を改善するところまで考えることが大切です。

4.会社が相談を放置すると、どうなる?

社長

もし会社が相談を受けても、事実確認をせず、そのままにしていたらどうなるのでしょうか?

営業部長本人の問題であって、会社まで責任を負うことになるのですか?

北

会社の責任が問題になる可能性があります。

実際に、上司からセクハラを受けた職員が相談窓口に改善を求めたにもかかわらず、担当責任者が適切な調査や対応を行わなかったことが争われた裁判例があります。

この裁判では、上司によるセクハラだけでなく、相談を受けた担当責任者が必要な対応をしなかったことも違法と判断され、市に損害賠償が命じられました。

つまり、「セクハラをしたのは本人だから、会社は関係ない」とは言えないということです。

会社には、セクハラを防止するための措置を講じ、相談があった場合には迅速かつ適切に対応することが求められています。

相談窓口を設けていても、実際に相談を受けたときに動かなければ意味がありません。

特に、相談内容を軽く扱ったり、加害者とされる人の説明だけを聞いて終わらせたりすることは避ける必要があります。

5.調査の途中で、別のトラブルが起きないか心配です

社長

調査を始めると、誰が相談したのか社内に広まったり、営業部長が相談者に文句を言ったりしないか心配です。

北

それは非常に重要な点です。

セクハラの相談対応では、調査の過程で新たな被害を生まないことにも十分な配慮が必要です。

例えば、次のような対応が考えられます。

  • 相談者の氏名や相談内容を、不必要に社内へ広めない
  • 聴取する人や情報を共有する範囲を、必要最小限にする
  • 相談者と行為者とされる人を、必要に応じて別々に聴取する
  • 相談したことを理由に、降格や不利益な配置変更などを行わない
  • 調査中や対応後にも、嫌がらせや報復が起きていないか確認する

調査のために一定の情報共有が必要な場合でも、関係者のプライバシーに十分配慮しなければなりません。

また、相談者だけを一方的に異動させて解決しようとすると、かえって本人に不利益を与えるおそれがあります。

調査後も相談者の状況を確認し、必要に応じて再発防止のための指導や職場環境の見直しを行うことが重要です。

まとめ|セクハラ相談は「受け付けて終わり」にしない

セクハラの相談を受けた会社に必要なのは、単に相談窓口を設けておくことではありません。

実際に相談があったときに、事実関係を確認し、相談者を保護し、問題が認められれば適切な措置を講じることです。

特に中小企業では、経営者や管理職が直接相談を受けることも多いでしょう。

その際、個人的な印象や当事者との人間関係だけで判断せず、客観的な事実に基づいて対応することが大切です。

「相談を受けたあと、会社がどう動いたか」。

それが、従業員の信頼を守るだけでなく、会社自身の法的リスクを抑えるうえでも重要になります。

オフィスキタでは、ハラスメント相談後の対応、事実関係の調査、就業規則の整備、再発防止に向けた労務管理など、中小企業の実情に応じた支援を行っています。

投稿者プロフィール

北 健夫
北 健夫社会保険労務士・行政書士
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北 健夫