内部通報制度はどう整備する?中小企業が見直したい窓口・守秘義務・社内規程のポイント

「内部通報窓口は総務部です」

就業規則や社内規程に、そのように書いている会社もあるでしょう。

しかし、実際に社員から通報があったとき、総務担当者は何をすればよいのでしょうか。

通報の相手が総務部長や社長本人だったらどうするのか。誰が調査し、誰に報告し、どこまで情報を共有してよいのか。

2026年12月1日施行の改正公益通報者保護法では、内部通報制度の実効性を高めることが重視されています。

今回は、中小企業の経営者が社内体制を見直す際のポイントを整理します。

1.内部通報窓口を設ければ、法律上の対応は十分?

社長

社内規程には「公益通報は総務部で受け付ける」と書いてあります。

これで内部通報制度を整備したことになるのでしょうか?

北

窓口を決めることは必要な取組の一つですが、それだけでは十分とはいえません。

例えば、通報があった後、誰が調査するのか、不正が確認されたら誰が是正するのか、通報者の秘密をどのように守るのか、といった仕組みが必要です。

常時使用する労働者が300人を超える事業者では、内部公益通報対応体制の整備などが法律上の義務となっています。

300人以下の企業では体制整備は努力義務ですが、通報を受けたときに適切に対応できる仕組みを考えておく価値があります。

大切なのは、社内規程と実際の運用が一致していることです。

2.通報を受け付ける担当者は、誰でもよい?

社長

総務部の担当者に、通常業務と兼務してもらおうと思っています。

それでもよいでしょうか?

北

会社の規模や体制に応じて兼務を検討することは考えられます。

ただし、法律上の指定が必要な事業者では、公益通報への対応業務を行い、通報者を特定させる情報を取り扱う「公益通報対応業務従事者」を適切に指定する必要があります。

また、従事者には法律上の守秘義務があり、違反した場合には刑事罰の対象となることがあります。

そのため、単に「総務部が担当」とするだけでなく、誰がどの業務を担当し、何の情報を取り扱うのか、指定や役割を明確にする必要があります。

小規模な会社でも、通報を受け付ける人に対し、秘密保持と記録管理の方法を説明しておくことが重要です。

3.通報された上司自身に調査を任せてもよい?

社長

例えば、営業部長についての通報があった場合、業務のことをよく知っている営業部長本人に事情を確認してもらうのが早いと思うのですが。

北

そのような対応は慎重に考える必要があります。

通報の対象となっている人が調査を主導すれば、公正な判断が難しくなったり、通報者に不利益が生じたりするおそれがあります。

また、通報の対象者が経営者や役員である場合には、通常の指揮命令系統だけでは適切な調査ができないこともあります。

内部通報制度では、通報案件と利害関係のある人を、調査や是正の判断から適切に外すことが重要です。

必要に応じて、外部専門家などを関与させる方法も考えられます。

4.通報者の名前は、会社の中でどこまで共有できる?

社長

事実関係を調べるためには、関係部署に説明することも必要ですよね。

通報者の名前を伝えてもよいのでしょうか?

北

調査上、必要な情報共有が求められる場合はあります。

しかし、だからといって通報者の名前や、誰が通報したか推測できる情報を、広く共有してよいわけではありません。

通報者を特定させる情報は、必要な範囲で慎重に取り扱う必要があります。

例えば、「この件を知っているのはAさんだけだから、Aさんが通報したのだろう」と分かるような情報共有も問題になる可能性があります。

また、社内で調査を進める際には、単に秘密を漏らさないだけでなく、正当な理由のない通報者探しや、通報への報復が起きないようにする必要があります。

調査に必要な情報と、通報者を特定させる情報は、できる限り分けて管理することが大切です。

5.実際に使える内部通報制度にするには、何を整える?

社長

規程を見直すなら、どのような項目から確認すればよいでしょうか?

北

まずは、次の事項を整理することをおすすめします。

① 受付窓口

社員や法律上の対象となる関係者が、どこへ連絡すればよいかを明確にする。

② 担当者と権限

誰が通報を受け付け、調査し、是正を判断するのかを決める。必要な従事者指定も確認する。

③ 守秘義務と情報共有の範囲

通報者を特定させる情報を、誰が、どの範囲で取り扱うか整理する。

④ 利益相反の排除

通報対象となった上司や役員などが、調査を不当に左右しない仕組みを設ける。

⑤ 調査・是正の手順

受付から事実確認、必要な措置、再発防止までの流れを明確にする。

⑥ 不利益な取扱いの防止

通報したことを理由とする解雇・懲戒・不利益な異動などを防ぐ。

⑦ 対象者への周知・研修

利用できる人、窓口、相談方法、秘密保持の取扱いなどを、必要な人に伝える。

⑧ 記録の保管と制度の見直し

受付日、確認した事実、調査結果、是正措置などを適切に記録し、定期的に運用状況を確認する。

ただし、企業規模によって法的義務の範囲は異なります。また、すべての会社が同じ組織や書式を導入しなければならないわけではありません。

社内で対応が難しい事項については、外部の専門家と連携する方法も考えられます。

まとめ

内部通報制度は、規程や窓口を用意しただけで完成するものではありません。

重要なのは、通報を適切に受け付け、秘密を守りながら必要な調査を行い、問題があれば是正できることです。

今回の法改正を機会に、既存の規程と実際の業務手順にずれがないか確認してみてはいかがでしょうか。

オフィスキタでは、就業規則、社内規程、労務管理上の報告・相談手順、総務・人事部門の運用体制などの整備を支援しています。

会社の規模に合った仕組みを検討される場合は、ご相談ください。

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投稿者プロフィール

北 健夫
北 健夫社会保険労務士・行政書士
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