試用期間中の社員にミスが多い。本採用を拒否できる?解雇を判断する前に確認したいこと

「試用期間中なのだから、仕事ができない社員は辞めてもらえる」

そのように考えている経営者もいるかもしれません。

しかし、試用期間中であっても、会社と従業員の間にはすでに労働契約が成立しています。

仕事のミスが多い、指導しても改善しない、上司の注意に反抗する。

こうした社員について、会社はどこまで対応できるのでしょうか。

今回は、試用期間中の解雇と本採用拒否について、実際に判断する際の注意点を整理します。

1.試用期間中なら、会社の判断で解雇できる?

社長

当社では試用期間を3か月としています。

採用してまだ2か月ですが、ミスが多く、上司の指導にも素直に従いません。

試用期間中なので、解雇しても問題ないでしょうか?

北

試用期間中だからという理由だけで、自由に解雇できるわけではありません。

一般的な試用期間は、採用後に従業員の能力や適性を確認し、一定の条件の下で会社が解約できる権利を留保した労働契約と考えられています。

通常の解雇より広い範囲で解約が認められる余地はありますが、それでも客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえることが必要です。

「ミスが多い」「反抗的だ」という評価だけではなく、その具体的な内容が重要になります。

2.ミスや反抗的な態度は、本採用拒否の理由になる?

社長

注意しても同じ間違いを繰り返し、上司に言い返すこともあります。

こうした事情なら、本採用を拒否できますか?

北

その可能性はありますが、ミスの内容や程度、指導への反応を詳しく確認する必要があります。

例えば、業務に重大な影響を与えるミスを何度も繰り返しているのか。それとも、新人であれば通常起こり得る程度のミスなのか。

また、上司の指示が適切だったか、本人が理解できる説明を受けていたかも重要です。

「反抗的」といっても、正当な疑問を述べたのか、業務指示を繰り返し拒否したのかでは評価が異なります。

採用時にどのような能力や経験を期待していたのか、実際にどの程度の業務を担当させていたのかも合わせて判断する必要があります。

3.改善の機会を与えずに、本採用を拒否してもよい?

社長

能力不足が明らかなら、改善指導をせずに本採用拒否へ進んでもよいでしょうか?

北

事案によりますが、改善の機会を与えずに判断すると、会社側にとって不利になる場合があります。

特に、業務に慣れていないことによるミスであれば、指導や教育によって改善する可能性があります。

会社としては、何が問題なのか、どの水準まで改善してほしいのかを具体的に伝えることが重要です。

例えば、次のような記録を残しておきましょう。

  • 発生したミスの日時と内容
  • 会社が行った注意・指導
  • 本人の説明や反応
  • 改善を求めた事項と期限
  • その後の改善状況

「何度注意しても直らなかった」という抽象的な説明だけでなく、具体的な事実を示せる状態にしておくことが大切です。

4.試用期間の満了まで待てば、本採用を拒否しやすくなる?

社長

今すぐ解雇するのではなく、3か月の満了まで待ってから本採用を拒否する方がよいのでしょうか?

北

十分な観察や指導を行うという意味では、満了までの期間を活用することに意味があります。

ただし、満了日まで待てば自動的に本採用拒否が有効になるわけではありません。

試用期間中の勤務状況、問題の重大性、改善の可能性、会社の指導内容などを総合的に判断する必要があります。

また、本採用拒否は、原則として解雇に当たります。

試用開始後14日を超えて引き続き使用している場合には、原則として30日前の解雇予告、または不足する日数に応じた解雇予告手当の支払いも必要です。

ただし、解雇予告の手続を守ったからといって、解雇そのものが有効になるわけではありません。

5.本採用拒否を検討する前に、会社は何をしておくべき?

社長

では、試用期間中の社員に問題がある場合、会社としてはどう進めるべきでしょうか?

北

私は、少なくとも次の順序で確認することが重要だと考えます。

① 問題となる事実を具体的に確認する

ミスや指示違反の内容、回数、業務への影響を整理します。

② 本人の説明を聞く

業務への理解不足、指示の曖昧さ、教育体制の問題などがないかも確認します。

③ 必要な指導と改善機会を設ける

改善すべき事項を明確にし、経過を記録します。

④ 改善状況と職務適性を評価する

単なる印象ではなく、採用時の期待水準や担当業務に照らして判断します。

⑤ 就業規則と解雇手続を確認する

試用期間、本採用拒否、解雇事由などの規定と、解雇予告の要否を確認します。

重要なのは、試用期間を「辞めさせやすい期間」と考えるのではなく、会社と従業員が適性を確認し、必要な指導を行う期間として運用することです。

まとめ

試用期間中であっても、会社は自由に解雇や本採用拒否をできるわけではありません。

ミスの多さや指導への反抗を問題にする場合も、その内容、程度、会社の指導状況、改善の可能性などを具体的に確認する必要があります。

特に避けたいのは、十分な事実確認をせず、「試用期間だから」という理由だけで本採用を拒否することです。

オフィスキタでは、問題社員への注意指導、改善指示、就業規則の整備、解雇・本採用拒否に関する労務管理上の検討などを支援しています。

試用期間中の社員への対応に迷う場合は、ご相談ください。

あわせて読みたい関連記事

投稿者プロフィール

北 健夫
北 健夫社会保険労務士・行政書士
依頼者様の悩みに寄り添い,親切・丁寧にサポートいたします。
少しでもあなたのお悩み解決の力になれればうれしい限りです。

和歌山県,大阪府南部や近県の方,あなたの周囲のお困りごとは,当事務所で解決できるかもしれません。
お気軽にご相談ください。

オフィス キタ
特定社会保険労務士・特定行政書士
北 健夫