試用期間は延長できる?1年契約なら本採用を拒否しやすい?会社が誤解しやすい制度の注意点

「試用期間が終わるまでに能力を判断できなかったので、もう少し延長したい」
「最初は1年間の契約社員として採用し、問題がなければ正社員にしたい」
このような制度を考えている会社もあるでしょう。
しかし、試用期間の延長や有期労働契約の利用には、注意すべき法律上の問題があります。
今回は、試用期間の制度を設計・運用する際に、経営者が確認しておきたい点を整理します。
1.試用期間の満了が近い。会社の判断で延長できる?

試用期間を3か月としていますが、問題のある社員について、もう少し様子を見たいと思っています。
会社の判断で試用期間を延長できますか?

試用期間の延長は、いつでも自由にできるものではありません。
まず、就業規則や雇用契約に、試用期間の延長についてどのような定めがあるか確認する必要があります。
延長できる場合であっても、なぜ延長が必要なのか、どのくらいの期間が必要なのかについて、合理的な説明が求められます。
単に本採用の判断を先送りしたいという理由だけでは、延長が認められない可能性があります。
2.就業規則に延長の規定があれば、それだけで大丈夫?

就業規則に「必要があれば試用期間を延長できる」と書いておけばよいのでしょうか?

延長に関する規定を設けることは重要ですが、それだけであらゆる延長が有効になるわけではありません。
例えば、次の点を明確にしておきたいところです。
- 延長を認める理由
- 延長できる期間の上限
- 延長する際の本人への通知
- 延長中の指導・評価方法
本人の適性を判断するために、追加で確認すべき事項があるのかという視点が重要です。
また、試用期間が満了する前に、延長理由と期間を本人に具体的に伝え、必要な手続を取ることも大切です。
就業規則等に延長の根拠がない場合は、会社が一方的に延長できると考えず、労働契約の内容や本人の合意の問題も含めて慎重に検討する必要があります。
3.試用期間を延長すれば、改善しなかったときに解雇できる?

延長した期間中も改善が見られなければ、今度こそ本採用を拒否できるのでしょうか?

延長したという事実だけで、本採用拒否が有効になるわけではありません。
延長期間中に何を確認し、どのような改善を求めるのかを明確にしておく必要があります。
例えば、作業の正確性、期限の遵守、業務指示への対応などについて、具体的な評価項目を設定する方法が考えられます。
そのうえで、会社が必要な指導を行い、実際の改善状況を記録します。
延長は、単に判断を先送りする期間ではなく、適性や改善状況を確認するための期間として運用することが重要です。
4.1年契約の社員なら、満了時に自由に本採用を拒否できる?

当社では、最初の1年を契約社員として採用し、問題がなければ正社員にしようと考えています。
1年契約なら、満了時に本採用を拒否しても問題ないでしょうか?

まず、実際にどのような労働契約を結んでいたのかを確認する必要があります。
例えば、契約期間が1年間であることを労使双方が明確に理解し、その期間で終了する契約として締結した場合と、正社員としての適性を確認するために形式上1年間とした場合では、判断が異なることがあります。
最高裁判例でも、契約期間を設けた目的が従業員の適性を判断するためであった場合、契約満了で当然に終了する明確な合意などの特段の事情がなければ、試用期間と評価される場合があるとされています。
つまり、契約書に「1年間」と書けば、必ずその日で自由に雇用関係を終了できるわけではありません。
他方、真正な有期労働契約であっても、更新への合理的期待などが生じている場合には、雇止めに関する法律上の制約が問題になることがあります。
5.有期契約の社員に試用期間を設ける場合は?

では、1年契約の社員について、最初の3か月を試用期間にすることはできますか?

有期労働契約に試用期間を設けること自体が、直ちに禁止されているわけではありません。
ただし、契約期間中に会社から解雇する場合、労働契約法第17条により、原則として「やむを得ない事由」が必要です。
これは、一般的な無期労働契約の解雇よりも厳しく判断されます。
「試用期間中だから」「仕事が合わなかったから」という理由だけで、契約期間の途中に自由に終了できるわけではありません。
採用時には、次の事項を整理しておきましょう。
- 期間の定めがある契約なのか、無期契約の試用期間なのか
- 契約期間と試用期間はそれぞれ何か月なのか
- 契約更新の有無や判断基準はどうなっているか
- 本採用や正社員登用の条件をどう説明しているか
- 途中解雇と期間満了時の取扱いをどう区別するか
「試用期間」という名前よりも、実際の契約内容と運用が重要です。
まとめ
試用期間は、会社が自由に延長したり、従業員を簡単に辞めさせたりできる制度ではありません。
延長する場合は、就業規則等の根拠、延長の必要性、期間、本人への説明、改善指導の内容を確認する必要があります。
また、最初に1年間の契約を結ぶ場合も、契約期間を設けた目的や、実際に会社と従業員がどのような合意をしていたかが問題になります。
特に有期労働契約の途中解雇では、無期契約とは異なる厳しい要件に注意が必要です。
オフィスキタでは、試用期間の規定、雇用契約書・労働条件通知書、就業規則の整備、採用後の指導・評価の仕組みづくりなどを支援しています。
試用期間や有期契約の運用について、お困りの際はご相談ください。
あわせて読みたい関連記事
試用期間中の社員にミスが多い。本採用を拒否できる?解雇を判断する前に確認したいこと
投稿者プロフィール

- 社会保険労務士・行政書士
-
依頼者様の悩みに寄り添い,親切・丁寧にサポートいたします。
少しでもあなたのお悩み解決の力になれればうれしい限りです。
和歌山県,大阪府南部や近県の方,あなたの周囲のお困りごとは,当事務所で解決できるかもしれません。
お気軽にご相談ください。
オフィス キタ
特定社会保険労務士・特定行政書士
北 健夫





