取引先の値上げ要求を無視しても大丈夫?無償の荷積みや同業者との情報交換にも注意

「仕入価格が上がると困るので、今までどおりの金額でお願いしたい」

「少しの荷積みなら、ついでに手伝ってもらえばいい」

「同業者と価格情報を交換して、営業の参考にしたい」

いずれも、会社の利益や業務の効率を考えた行動かもしれません。

しかし、取引先との関係や具体的な行為によっては、取適法や独占禁止法などの問題につながる可能性があります。

今回は、中小企業の取引担当者が注意したい4つの場面を紹介します。

1.取引先から値上げを頼まれても、断るのは自由?

社長

取引先から「原材料費が上がったので、納入価格を引き上げてほしい」と言われました。

でも、当社も利益が厳しいので、値上げは認めたくありません。

北

値上げ要求を必ず受け入れなければならない、ということではありません。

ただし、取適法の対象となる取引では、取引先から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり必要な説明をしなかったりして、一方的に代金を決めることが禁止されています。

2026年1月1日から施行された取適法で、特に注意したい点です。

重要なのは、値上げを認めるかどうかだけでなく、適切な価格協議を行ったかということです。

2.相手の希望額を認めなくてもよい?

社長

話し合いはしたものの、相手の希望額までは認められないこともありますよね。

北

もちろんあります。

価格協議をした結果、相手の要求額をすべて受け入れられない場合もあるでしょう。

ただし、そのときは、なぜその金額になるのか、どのような事情を考慮したのかを説明できる状態にしておくことが大切です。

協議の日付、相手からの申入れ内容、提示した根拠、話し合いの結果を記録しておくと、後日のトラブル防止に役立ちます。

なお、取適法は、すべての企業間取引に一律に適用されるわけではありません。委託する業務の種類や、当事者の資本金・従業員規模など、適用要件の確認が必要です。

3.納入業者に無償で荷積みを手伝ってもらうのは?

社長

納品に来た業者に、ついでに荷物の積み替えや仕分けを手伝ってもらうことがあります。

少しの作業なら問題ないでしょうか?

北

契約や発注内容に含まれていない作業を、取引上の立場を利用して無償で求めている場合には注意が必要です。

取適法の対象取引であれば、不当な経済上の利益の提供要請が問題になることがあります。

また、取引上優越した地位を利用して、相手に正常な商慣習に照らして不当な不利益を与える場合には、独占禁止法上の問題も考えられます。

荷積み、荷卸し、仕分け、待機などの作業について、誰が担当するのか、費用はどうするのかを事前に明確にしておくことが重要です。

4.同業者と価格情報を交換するのも問題?

社長

業界の勉強会や懇親会では、同業者と製品価格や販売状況について話すこともあります。

それも避けた方がよいのでしょうか?

北

一般的な業界情報の交換が、すべて禁止されるわけではありません。

ただし、競争関係にある会社同士で、将来の販売価格や値上げ幅など、重要な競争条件に関する情報を交換する場合は注意が必要です。

情報交換を通じて、価格をそろえる共通の意思や暗黙の了解が形成されたと判断されれば、独占禁止法上のカルテルの問題につながるおそれがあります。

「正式な価格協定を結んだわけではないから大丈夫」とは限らないのです。

5.営業担当者には何を伝えておくべき?

社長

担当者は、取引先との関係をよくするつもりで対応しているだけかもしれません。

どうすれば防げますか?

北

まず、担当者が独断で判断してよい範囲を明確にしましょう。

例えば、価格改定の申入れを受けた場合の報告先、追加作業を依頼するときの承認方法、同業他社との会合で扱ってはいけない情報などです。

また、経営者自身が取引条件を決める場合も、適用される法律を確認する必要があります。

「取引先と仲良くすること」と「相手に不当な負担を求めないこと」は、両立させなければなりません。

まとめ

取引先の値上げ要請を無視すること、契約外の作業を無償で求めること、同業者間で価格情報を交換すること。

こうした行為は、本人には悪意がなくても、取引の内容や当事者の関係によって法律上の問題につながる可能性があります。

大切なのは、取引条件を明確にし、価格協議や追加作業の経緯を記録し、担当者だけに判断を任せないことです。

製造業や関連事業を営む会社では、2026年1月施行の取適法の対象となるかどうかも確認しておきたいところです。

オフィスキタでは、企業の社内ルールや担当者の業務運用、総務・管理部門の体制整備などを支援しています。取引法令の個別の違反判断や紛争対応については、必要に応じて該当分野の専門家への相談も検討してください。

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投稿者プロフィール

北 健夫
北 健夫社会保険労務士・行政書士
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北 健夫