カスハラが起きたら現場はどこまで対応する?「お客様だから」で我慢させないための会社のルール

2026年10月から、企業にはカスタマーハラスメント対策が義務づけられました。

では実際に、社員が顧客から暴言を受けたり、長時間にわたって苦情を言われたりしたとき、どこまで対応させればよいのでしょうか。

「お客様だから最後まで話を聞かなければならない」
本当にそうでしょうか。

今回は、ある会社の社長とオフィスキタ代表・北のやり取りから、実務のポイントを整理します。

社長

社員から「お客さんに1時間以上怒鳴られた」と報告がありました。
でも、お客様からの苦情ですから、途中で電話を切るわけにもいかないですよね?

北

そこは分けて考える必要があります。

商品やサービスに問題があって、正当な苦情を受けているのであれば、会社としてきちんと対応しなければなりません。

ただし、正当な苦情だからといって、暴言や脅迫、長時間の拘束まで社員が耐え続けなければならないわけではありません。

社長

では、社員が「もう対応できません」と言ってきたら、上司が代わるということでしょうか。

北

そうです。

むしろ会社として、どの段階で上司に交代するのかを事前に決めておくことが大切です。

現場の社員に
「これはカスハラなのか」
「まだ我慢するべきなのか」
「電話を切っていいのか」
という判断をすべて任せてしまうと、結局、真面目な社員ほど長時間対応することになります。

社長

一番気になるのですが、会社側から電話を切ることもできるんですか?

北

状況によっては可能です。

たとえば、会社として必要な説明を十分に行ったにもかかわらず、
「同じ要求を何度も繰り返す」
「担当者を延々と責め続ける」
「回答できない要求を繰り返す」
といった状態になっている場合です。

ただし、社員がその場の感情で突然電話を切るのではなく、どの段階で対応を終了するのかを会社として決めておくことが重要です。

社長

電話の内容を録音しておくのも有効でしょうか?

北

有効です。

後から「言った・言わない」になった場合にも、客観的な記録が残ります。

ただし、録音データには個人情報が含まれることもありますので、誰が確認できるのか、どのくらい保存するのかといった扱いも決めておく必要があります。

社長

「店に行くぞ」「お前をどうにかしてやる」などと言われた場合はどうでしょう?

北

内容によっては、通常のクレーム対応の範囲を超えています。

暴行や脅迫など、犯罪に該当する可能性がある言動については、警察への通報も検討すべきです。

「お客様とのトラブルだから」とためらうのではなく、社員の安全を優先する場面があります。

社長

結局、会社としてある程度の基準を決めておかないと難しそうですね。

北

そこが一番重要です。

「何かあったら上司に相談してください」だけでは、実際の現場では動けません。

どの段階で上司に報告するのか、どこから先は一人で対応させないのかを、あらかじめ決めておく必要があります。

社長

つまり、現場の社員に全部判断させないことが大事なんですね。

北

そのとおりです。

カスハラ対応で大切なのは、社員に「うまく対応しなさい」と求めることではありません。

「ここまでは現場で対応する」「ここから先は会社が引き取る」という線を、会社として決めておくことです。

社長

具体的には、どんなことを会社のルールとして決めておけばいいのでしょう?

北

たとえば、

・上司へ報告する基準
・一人で対応させないケース
・録音や記録の残し方
・対応を終了する基準
・警察や弁護士へつなぐ基準

などです。

細かく作り込みすぎるより、現場が迷わず動ける程度にシンプルに決めておくことが大切です。

社長

ルールを作ったら、社員にも説明しておいたほうがいいですね。

北

もちろんです。

規程やマニュアルを作っても、社員が知らなければ意味がありません。

特に、「困ったらどこで対応を止めていいのか」を共有しておくことで、社員が一人で抱え込みにくくなります。

まとめ

カスタマーハラスメント対応では、正当な苦情にはきちんと対応しながら、行き過ぎた言動から社員を守ることが重要です。

そのためには、
「どこまでは現場で対応するのか」
「どこから上司や会社が引き取るのか」
を、あらかじめ決めておく必要があります。

一人で対応させない、記録を残す、必要に応じて対応を終了する、悪質な場合は警察等への相談も検討する。

カスハラ対策は、社員個人の対応力に任せるのではなく、会社としての対応ルールを整えておくことが実務上のポイントです。

投稿者プロフィール

北 健夫
北 健夫社会保険労務士・行政書士
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北 健夫