社員のSNS利用、会社はどこまで制限できる?勤務中のスマホ・休日の投稿・炎上対策

社員のSNS利用、会社はどこまで制限できる?勤務中のスマホ・休日の投稿・炎上対策

従業員がSNSに投稿した写真から、会社の内部情報が広まってしまった。

あるいは、勤務中に何度もスマートフォンを操作している社員がいる。

SNSが日常生活に浸透した今、こうした問題は大企業だけのものではありません。

「トラブルを防ぐために、社員のSNS利用を禁止したい」

そう考える経営者もいるでしょう。

しかし、会社が制限できる範囲は、勤務中なのか勤務時間外なのか、投稿内容が会社にどのような影響を与えるのかによって異なります。

今回は、社長とオフィスキタ代表・北のやり取りを通して、従業員のSNS利用に関する実務上の注意点を整理します。

1.勤務中の私的なSNS利用は禁止できる?

社長

最近、勤務中に私物のスマートフォンでSNSを見ている社員が気になるんです。

仕事に集中してもらいたいので、勤務中の私的なSNS利用を禁止しても問題ありませんよね?

北

はい。勤務中は仕事に専念することが基本ですから、業務に支障を生じさせる私的なSNS利用について、会社が合理的なルールを設けて制限することは可能です。

また、会社のパソコンやスマートフォンを業務以外に使用することについても、会社が利用ルールを定められます。

ただし、勤務中の利用と、休憩時間や勤務時間外の利用は分けて考える必要があります。

休憩時間は原則として従業員が自由に利用できる時間です。

「会社にいる間は私物スマホでSNSを一切見てはいけない」といった一律の禁止ではなく、業務への影響や情報管理上の必要性に応じて、制限する範囲を明確にしておくことが大切です。

2.休日に社員が何を投稿するかも、会社が禁止できる?

社長

それなら、休日も含めて、社員がSNSに会社のことを書くのを全面的に禁止するのはどうでしょう?

会社の名前が出れば、何か問題が起こるかもしれませんから。

北

勤務時間外の私的なSNS利用まで、会社が無条件に禁止することはできません。

SNSでの発信も、従業員の私生活上の行動の一つだからです。

ただし、休日の投稿だから会社は何もできない、というわけでもありません。

例えば、顧客の個人情報や会社の営業秘密を投稿したり、特定の人物を誹謗中傷したりすれば、問題になり得ます。

一方、会社に対する意見や批判が書かれているというだけで、すべてを禁止・処分できるわけではありません。

会社としては、私生活そのものを管理しようとするのではなく、守る必要のある情報や、禁止すべき具体的な行為を明確にすることが重要です。

3.会社名を出していなければ、自由に投稿してもよい?

社長

社員が会社名を出さず、匿名で投稿しているなら、問題は起きにくいでしょうか?

北

匿名だから安心とは限りません。

例えば、次のような投稿には注意が必要です。

  • 職場で撮影した写真に、顧客の書類や社員の名札が写っている
  • 取引先との打ち合わせ内容を、何気なく投稿している
  • 新製品や未公表の事業計画について書いている
  • 顧客や取引先への不満を、相手が推測できる形で投稿している
  • 職場で撮影した動画に、業務上の機密情報が映り込んでいる

本人は会社名を隠したつもりでも、写真の背景や過去の投稿などから、勤務先が分かることがあります。

しかも、SNSでは一度投稿した情報がコピーや転載によって広がり、後から削除しても完全には回収できない場合があります。

会社としては、「匿名なら大丈夫」「個人のアカウントだから関係ない」という認識を改めてもらうことが必要です。

4.SNSで炎上した社員は、懲戒処分や解雇にできる?

社長

もし社員の不適切な投稿が炎上して、会社にも苦情が来たらどうでしょう?

会社の信用を傷つけたのだから、懲戒処分や解雇も考えられますよね?

北

投稿の内容や会社への影響によっては、懲戒処分を検討することはあります。

ただし、炎上したという事実だけで、直ちに懲戒処分や解雇が認められるわけではありません。

まず確認したいのは、次のような事情です。

  • 投稿内容が事実かどうか
  • 会社の秘密情報や第三者の権利を侵害していないか
  • 業務や会社の信用にどのような影響が生じたか
  • 就業規則でどのような行為を禁止しているか
  • 本人に事情を確認し、適切な手続きを踏んでいるか

懲戒処分には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。

また、解雇については、さらに慎重な判断が求められます。

なお、会社の不正を適法な方法で通報する行為など、法律上保護される場合もあります。会社にとって都合の悪い投稿を、すべて「信用を傷つけた」と扱わないことも大切です。

問題が起きたときは、感情的に処分を決めるのではなく、事実関係と会社への影響を整理したうえで対応する必要があります。

5.中小企業では、どんなSNSルールを作ればよい?

社長

うちはSNSについて、特に社内ルールを作っていません。

トラブルが起きる前に、どのようなことを決めておけばよいでしょうか?

北

まずは、社員が何をしてはいけないのか、具体的に分かるルールを作ることです。

例えば、次のような内容が考えられます。

① 勤務中の私的利用

業務中の私的なSNS利用について、原則や例外を明確にする。

② 情報漏えいの防止

顧客情報、営業秘密、未公表の業務情報などを無断で投稿しない。

③ 写真・動画の撮影と投稿

職場や取引先で撮影する場合の許可、写り込む情報や人物への配慮を定める。

④ 会社公式アカウントの管理

投稿担当者、承認方法、ID・パスワードの管理、退職時の引継ぎなどを決める。

⑤ 問題が発生した場合の報告

誤投稿や情報漏えいに気づいたとき、誰に、どのように報告するかを明確にする。

そのうえで、就業規則やSNS利用ガイドラインに反映し、社員に周知します。

ただ、規程を配布するだけでは不十分です。

例えば、「職場で撮った写真を投稿したら、机の上の顧客名簿まで写っていた」といった具体例を使って説明する方が、社員にも危険性が伝わりやすいでしょう。

正社員だけでなく、パート・アルバイトを含め、業務に関わる人へ必要な教育を行うことも重要です。

まとめ|SNSを禁止するより、問題になる行為を明確にする

従業員のSNS利用は、会社がすべて自由に制限できるものではありません。

勤務中の私的利用については合理的な制限が可能ですが、勤務時間外の私生活にまで無条件に介入することは適切ではありません。

一方で、顧客情報の漏えいや不適切な投稿によって、会社が大きな影響を受ける可能性もあります。

だからこそ重要なのは、「SNSは禁止」と一括りにするのではなく、何が問題になるのかを具体的に示すことです。

就業規則やガイドラインを整え、社員が迷ったときに判断できる基準をつくる。

そして、日頃から具体例を使って注意点を伝えておく。

こうした地道な取組みが、SNSによる労務トラブルや情報漏えいの予防につながります。

オフィスキタでは、就業規則や社内規程の整備、問題社員への対応、労務トラブルの予防など、中小企業の実情に応じた労務管理を支援しています。

投稿者プロフィール

北 健夫
北 健夫社会保険労務士・行政書士
依頼者様の悩みに寄り添い,親切・丁寧にサポートいたします。
少しでもあなたのお悩み解決の力になれればうれしい限りです。

和歌山県,大阪府南部や近県の方,あなたの周囲のお困りごとは,当事務所で解決できるかもしれません。
お気軽にご相談ください。

オフィス キタ
特定社会保険労務士・特定行政書士
北 健夫