入社誓約書、昔のひな形のままで大丈夫?会社が見直したいポイント

社員が入社するときに提出してもらう「入社誓約書」。
就業規則を守ることや、会社の秘密を外部に漏らさないことなどを約束してもらう書類ですが、何年も同じひな形を使い続けている会社もあるのではないでしょうか。
最近では、SNSへの投稿や生成AIの利用、転職者による前職の情報の持込みなど、以前とは異なる問題にも注意が必要です。
一方、誓約書に厳しい内容を書けば、必ずそのとおりに社員を処分できるわけではありません。
今回は、入社誓約書について会社が確認しておきたい点を、ある会社の社長とオフィスキタ代表・北のやり取りから整理します。
入社誓約書は、何のために提出してもらう?

うちでは新入社員に入社誓約書を書いてもらっています。
「就業規則を守り、誠実に勤務します」という内容なんですが、これだけで十分でしょうか?

それも大切な内容ですが、入社誓約書には、会社が特に守ってほしい事項を入社時に確認してもらう役割があります。
例えば、経歴や資格の申告内容に虚偽がないこと、会社の秘密情報を適切に扱うこと、業務上のルールを守ることなどです。
ただし、誓約書は就業規則の代わりになるものではありません。
懲戒処分などを行う場合には、就業規則上の根拠や処分の合理性も必要になります。
誓約書だけを整えるのではなく、就業規則との内容の整合性も確認しておきたいですね。
どのような内容を盛り込んでおくべき?

なるほど。では、一般的にはどんなことを書いておけばよいのでしょうか?

まずは、次のような事項が考えられます。
- 就業規則や服務規律を守ること
- 履歴書や職務経歴書、資格などの申告内容に虚偽がないこと
- 顧客情報や社内情報を適切に管理すること
- 会社の備品やデータを無断で持ち出さないこと
- 退職時には貸与物や業務資料を返還すること
ただ、すべての会社が同じ内容にする必要はありません。
顧客情報を多く扱う会社と、現場作業が中心の会社では、重視するリスクも異なります。
自社で実際に起こり得る問題を考え、必要な事項を選ぶことが大切です。
SNSや生成AIの利用についても書いておく?

最近は社員がSNSを使うのも当たり前ですし、生成AIを仕事に使うことも増えそうです。
そういうことも誓約書に書いておいた方がよいのでしょうか?

はい。今の時代は確認しておきたい事項です。
例えば、職場で撮影した写真に顧客情報が写り込んでいたり、社内資料を許可なく生成AIのサービスに入力したりすると、情報漏えいにつながるおそれがあります。
また、中途採用では、前の勤務先の顧客名簿や秘密資料を持ち込まないことも重要です。
ただし、「SNSを一切利用してはいけない」といった広すぎる禁止ではなく、何を投稿・入力・持込みしてはいけないのか、具体的に示すことが必要です。
誓約書と併せて、社内の情報管理ルールも説明しておきたいですね。
誓約書に違反したら、すぐに解雇できる?

誓約書に「違反した場合は解雇されても異議ありません」と書いて、本人に署名してもらえば、問題が起きたときに解雇できるんでしょうか?

署名があるからといって、当然に解雇できるわけではありません。
解雇には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
例えば、履歴書の記載に誤りがあっても、それが採用判断や職務上の適格性にどの程度関係するのかによって、判断は変わります。
また、誓約書を提出しない場合も、未提出という事実だけで直ちに採用内定を取り消せるとは限りません。
まずは理由を確認し、必要性や事情を踏まえて対応を判断することが重要です。
厳しい条件をたくさん書けば、会社を守れる?

それなら、違反した場合の損害賠償や、退職後に同業他社へ転職しないことなども、できるだけ厳しく書いておいた方が安心でしょうか?

厳しくすればよいというものではありません。
例えば、「違反したら一律100万円を支払う」といった労働契約上の違約金や損害賠償額の予定は、労働基準法上問題になります。
また、退職後の同業他社への転職を制限する場合も、社員の職業選択の自由との関係から、制限する必要性や期間、対象となる業務などが問われます。
さらに、秘密保持を重視する場合でも、法令に基づく正当な公益通報まで禁止することはできません。
会社を守るための誓約書だからこそ、守らせたい内容が合理的であることが必要です。
まとめ
入社誓約書は、社員に署名してもらうこと自体が目的ではありません。
会社が重視するルールを入社時に共有し、社員に理解してもらうための書類です。
従来のひな形を使い続けている場合は、経歴・資格の申告、秘密情報の取扱い、SNSや生成AIの利用、退職時の対応などについて、現在の業務に合っているか確認しておきたいところです。
一方で、誓約書に署名があれば、解雇や損害賠償などの対応が無条件に認められるわけではありません。
会社としては、誓約書・就業規則・実際の業務ルールを一致させ、入社する社員に内容を説明できる状態にしておくことが大切です。
古いひな形をそのまま使うのではなく、自社の業務と現在のリスクに合った内容になっているか、一度見直してみてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール

- 社会保険労務士・行政書士
-
依頼者様の悩みに寄り添い,親切・丁寧にサポートいたします。
少しでもあなたのお悩み解決の力になれればうれしい限りです。
和歌山県,大阪府南部や近県の方,あなたの周囲のお困りごとは,当事務所で解決できるかもしれません。
お気軽にご相談ください。
オフィス キタ
特定社会保険労務士・特定行政書士
北 健夫





